情勢の特徴 - 2026年1月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「厚生労働省は社会保険料の負担が生じる『130万円の壁』対策として2026年度から年収要件を緩和する。いまは残業代を含む給与や不動産・配当収入の合計だが、4月からは給与収入のみなら残業代を含めずに計算する。壁の実質的な引き上げでパート労働者の働き控え解消につなげる。2026年4月以降に被扶養者の認定を受ける人が対象になる。給与以外の収入がない人については、労働契約時に提示される労働条件通知書などに記載がある賃金をもとに計算する。契約段階で想定しづらい残業代は年収見込みに含めない。会社員である配偶者に扶養され、一定の収入がないパート主婦(主夫)などは医療や年金の社会保険料負担がない。いまは従業員が51人以上の企業で週20時間以上勤務する場合、年間収入が106万円を超えると扶養から外れて健康保険料や厚生年金保険料を支払う必要がある。従業員51人未満の企業で働く人についても、年収が130万円を上回ると社会保険に加入しなければならない。手取りが減らないよう就労時間を抑える働き控えの要因になっている。130万円の壁を超えるかどうかは、勤務先が発行する収入証明書や課税証明書などをもとに1年間の収入見込みで判定する。残業代を含む給与や不動産・配当収入が対象となる。…政府が23年10月に始めた『年収の壁・支援強化パッケージ』では、残業などで一時的に収入が増えて130万円を超えた場合であっても、事業主の証明があれば原則として連続2年まで扶養内にとどまれる措置を講じてきた。当面の間の時限措置としていたが、25年10月に恒久的な対応に切り替えた。年金分野では、会社員らに扶養される配偶者で保険料を払わずに国民年金を受け取れる『第3号被保険者制度』がある。年収106万、130万円の壁を意識して働く時間を抑える人もいる。厚労省は第3号被保険者の厚生年金への加入拡大を進めてきた。22年10月にこれまで従業員数501人以上としていた企業規模要件を101人以上まで広げた。24年10月には51人以上に再び拡大した。女性の社会進出が進んだこともあり、24年度の第3号被保険者数は約641万人と10年前から3割ほど減った。25年6月に成立した年金制度改革法では年収106万円以上とする賃金要件の撤廃を決めた。51人以上の企業規模要件も段階的に撤廃し、35年10月には全企業を対象にする。過20時間以上とする勤務時間の要件は残る。」(『日本経済新聞』2026.01.03)
●「日本で株高を要因とした経済格差が広がっている。人口およそ1万人に相当する上位0.01%層の所得全体に占める割合は、初めて2%超に達した。低・中所得層の貧困化も深刻で、経済運営は成長と分配のあいだで難しいかじ取りを迫られる。一橋大の森口千晶教授らが財務総合政策研究所の研究会に示した試算で明らかになった。所得上位0.01%のシェアは2023年時点で2.28%だった。アベノミクスが始まる12年の1.19%から倍近く上昇した。研究会資料によると所得水準の平均(18~23年)は1億7400万円にのぼる。顕著なのは資産増による所得のかさ上げだ。株や不動産の売買から得られる『キャピタルゲイン』を除くと、上位0.01%層の所得シェアは0.82%とほぼ横ばい。所得シェアの拡大はキャピタルゲインが主因といえる。キャピタルゲインを含めると、12年から23年にかけて上位0.1%の所得シェアは3.33%から4.83%に、上位1%は10.50%から12.04%にそれぞれ上がった。一方、上位5%、10%、20%層のシェアは横ばいからゆるやかな低下で、株式などの資産を『持てる者』の占有が強まっている。」(『日本経済新聞』2026.01.04)
●「政府は一般会計総額122兆3092億円の2026年度予算案を25年12月26日に決定した。公共事業関係費は前年度比0.4%増の6兆1078億円で、前年度を220億円上回った。25年度補正予算で確保した公共事業関係費2兆5420億円と一体で切れ目なく事業執行に当たる。公共事業関係費には国土強靭化関係として4兆1106億円が含まれる。25年度補正予算には第1次国土強靭化実施中期計画の初年度分として『推進が特に必要となる施策』に充てる予算を前倒しで計上しており、それ以外の分が26年度予算案に盛り込まれた。公共事業関係費の25年度補正と26年度当初を合わせた額は8兆6498億円。24年度補正と25年度当初を合わせた額からは2.5%増となっている。国土交通省によると、建設工事費デフレーターは直近1年ほどで2、3%の伸びとなっており、それに相当する水準の予算を追加的に確保したことになる。」(『建設工業新聞』2026.01.05)
●東京商工リサーチは7日、2025年の「人手不足」倒産が24年比35.9%増の397件に達し、過去最多になったと発表した。前年を上回るのは4年連続。資本金1000万円未満の小・零細企業が全体の6割超に当たる251件を占める。同社は、大手と中小企業の賃金格差拡大などによって「賃上げ原資を確保できない中小企業では人材流出が鮮明」になっていると分析している。(『しんぶん赤旗』2026.01.08より抜粋。)
●「不動産価格の高騰がマンション家賃に波及し、働く世代の家計を圧迫する懸念が強まってきた。東京23区ではファミリー層向けマンションの募集家賃が可処分所得の4割を超え、都心で手ごろな賃貸物件を探すのは難しくなりつつある。変動が少ないとされてきた家賃の本格的な上昇は新たなインフレ圧力になる。…家賃は住み替え時以外は引き上げ交渉が難しく、価格変動が小さい岩盤品目の代表とされてきた。最近は上昇が顕著だ。総務省が発表する消費者物価指数の『民営家賃』の項目は東京都区部で2025年12月、前年同月比2.0%上昇し、1994年2月以来31年ぶりの2%台に達した。各世帯のお財布事情を調べる総務省の家計調査ではまだ影響が顕著とは言いがたい。民間の賃貸物件に2人以上で暮らす勤労者世帯について可処分所得に占める『家賃地代』の割合(12カ月移動平均)をみると、2000年代以降長く17%前後で推移してきたのが、足元で15%台に低下した。統計の制約で地域を絞った分析はできないものの、全国的にはむしろ負担は軽くなったように見える。人手不足や物価高を背景にした高水準の賃上げによって可処分所得が先に増え、家賃の上昇は遅れてやってくるためだ。新たに東京で家探しをする人に限って分析すると状況は変わる。不動産情報サービスのアットホーム(東京・大田)のデータによると、23区の50~70平方メートルのマンションの平均募集家賃は足元で前年同月比10%前後伸びている。家計調査の23区の2人以上勤労者世帯の可処分所得を分母にして募集家賃の負担割合(12カ月移動平均)を試算すると、25年11月は45.5%に達した。過去10年ほどは35~40%ほどで推移していたのが25年に入ってからほぼ右肩上がりになった。一般的に家賃は可処分所得の25~30%にとどめるのが目安とされる。新たに住む人向けの募集家賃は高めになりやすいとはいえ、4割超えが常態化すれば、もはや都内で新たに家を借りるのは難しくなる。家賃上昇の背景にはマンション販売価格の高騰がある。都内では一等地でなくても新築・中古とも1億円を超える『億ション』が珍しくなくなった。ファミリー層がマイホーム購入を断念し、賃貸に住み続ける需要が高まったこともー因とみられる。資材価格や人件費の高騰分も家賃に転嫁されている。貸主が負担する修繕費などの維持管理コストが増え、その分を家賃に上乗せする必要が高まった。投資用の賃貸物件などでは借入金の金利上昇も押し上げ要因になる。これまで日本の物価上昇は円安、資源高によって食料品やエネルギーがけん引してきた。コメ価格が一服しつつあるなど足元は鈍化傾向がある。ガソリン税の旧暫定税率廃止や政府の電気・ガス代補助なども物価を下押しする状況で、家賃がインフレの新たな主役になる可能性もある。」(『日本経済新聞』2026.01.14)
●「帝国データバンクは13日、『2025年(1月-12月)全国企業倒産集計(負債額1000万円以上)』を公表した。25年の倒産件数は前年比3.6%増の1万0261件と4年連続で前年を上回り、13年の1万0332件以来、12年ぶりに年間1万件超となった。負債総額は29.4%減の1兆5668億8800万円で、2年連続で前年を下回った。中小零細規模の倒産が目立つ。」(『建設通信新聞』2026.01.14)
●「建設経済研究所と経済調査会は14日、2026年度建設投資見通しの1月推計を発表した。投資総額は名目値が前年度見通しと比べて5.7%増の81兆0700億円、物価変動の影響を除いた実質値が3.6%増の60兆3460億円。25年10月の前回推計と比べ名目値は3400億円、実質値は3028億円上方修正した。政府建設投資は見通しを引き下げたものの、引き続き堅調と見込んでいる。」(『建設通信新聞』2026.01.15)

行政・公共事業・民営化

●「公正取引委員会と内閣官房は、労務費転嫁の交渉時に受発注者が取るべき行動を示す労務費転嫁指針を1日付で改正した。発注者の優良事例として総合工事業のケースを追記し、受発注者の円滑な協議と適正な価格転嫁を促している。指針では円滑な価格交渉を進めるため、経営トップの関与や定期的な協議の実施など受発注者が取るべき12の行動を提示。沿わない行動を取った場合は厳正に対処する方針を明記している。改正では価格転嫁に関する過年度の調査で注意喚起文書の送付件数が多い総合工事業などについて、受発注者のパートナーシップに基づく価格転嫁の取り組みを浸透させるための優良事例を追加した。総合工事業による発注者としての優良事例を見ると、発注予定企業に労務費などのコスト上昇の実態を把握するためのアンケートを実施し、適正に価格転嫁されていないと回答した企業には優先的に価格交渉の場を設けている事例を追記した。サプライチェーン全体での価格転嫁に向けて、1次受注者に対して2次受注者やその先の受注者のコスト上昇分を含めた転嫁要請をするよう働き掛けている取り組みを記載した。改正建設業法に基づき、価格高騰に伴う請負代金の変更方法を契約書に記載し、実際に影響があった場合には受注者からの変更協議に応じている事例も掲載している。また、中小受託取引適正化法の施行を踏まえ、受注者が協議を要請した場合に応じず、一方的に取引価格を据え置くことは、同法に定める買いたたきや一方的な代金決定に該当することを明記した。」(『建設通信新聞』2026.01.05)
●「政府は2025年12月26日、新設する防災庁の組織体制や役割などをまとめた『防災立国の推進に向けた基本方針』を閣議決定した。防災庁は事前防災や発災時の対応の司令塔役を担う。内閣直下の組織として設け、首相を組織のトップとし、サポート役として防災大臣、副大臣、大臣政務官を置く。事務次官の下に4部門それぞれの統括官が4人就く。現行の内閣府防災(定員220人)を発展的に改組するもので、定員は352人となる。」(『建設工業新聞』2026.01.05)
●「国土交通省は、元下問と受発注者間の建設業法令順守ガイドラインを改正した。改正法の全面施行で運用が始まった新たな取引ルールの留意点や法令違反となり得る事例を追加。契約当事者の対等なパートナーシップに基づく適正な取引を促す。『元請負人と下請負人間における建設業法令順守ガイドライン』『発注者・受注者間における建設業法令順守ガイドライン』を改正した。改正法で禁じた著しく低い労務費での見積もり・契約については、労務費の基準(標準労務費)との乖離(かいり)の度合いとその理由、元下間や受発注者間の協議状況などを踏まえ違反かどうかを個別に判断するとした。労務費が最低賃金を下回る場合は当然に著しい乖離に該当すると明記した。見積もりで法令違反の恐れがある事例として、下請けや受注者から提出された適正な労務費に基づく見積もりを尊重せず、著しく低い労務費で見積もり変更を依頼するケースを追加。複数の建設業者から提出された見積もりのうち、最低金額での請負契約を別の建設業者に求めることも業法に触れる可能性があるとした。 建設工事標準請負契約約款に新設したコミットメント条項に関して、2次下請けが違反しても元請けの責任は不問となることを記載した。コミットメント条項に背いて技能者に適正な賃金を支払わない事業者は契約違反となるだけでなく、発注者や元請けの利益を損なった場合は同法に規定する『請負契約に関する不誠実な行為』に該当し得るとの見解を示した。」(『建設通信新聞』2026.01.06)
●「国土交通省は、住宅建設技能者の持続的確保に向けた中長期ビジョンの策定作業に着手した。他産業に劣らない就労環境の下、技能者を確保して高品質の住宅の安定供給と適切な維持管理・更新が実施される社会を官民で実現するために、将来像と具体的な取り組みを定める。社員大工化の促進と人材確保・育成を主なテーマに位置付け、ワーキンググループ(WG)を設置して議論を深める。6月にたたき台を作成し、2026年度中の策定を目指す。地方の中小工務店が直面している担い手不足について、25年2月に設置した懇談会で課題や今後の取り組みの方向性を話し合い、10月に取りまとめを策定した。取りまとめでは、▽選ばれる業界・職場への変革▽育成環境整備▽担い手の裾野拡大▽マネジメントの強化――の四つの視点を基に施策を検討するとともに、官民で連携し具体的に取り組むための中長期ビジョンの策定を求めた。これを受けて、12月24日に中長期ビジョンに関する検討委員会の初会合を開き、策定に向けて二つのWGを設けることを決めた。一つ目のWGでは、新規入職者が速やかに技能を身に付けられる環境整備として地域工務店での社員大工化に着目し、促進施策を検討する。また、実際に社員大工化を進める上で工務店の経営基盤を強化する必要があるため、先行事例から横展開できる経営基盤強化策を考える。二つ目のWGは人材確保・育成をテーマとする。個社が技能者を育てるのにコストや労力がかかっていることから、地域や業界による共同育成の普及策を検討する。担い手の裾野拡大に向け、女性や外国人、高齢者が作業しやすい工法や工程についても議論する。」(『建設通信新聞』2026.01.08)
●「国土交通省は、改正建設業法で措置した労務費の見積もり規制に違反の恐れのある具体的な行為を解説する事例集を作成した。建設Gメンの調査で実際にあった見積もりのやりとりの中で、改善が必要な取引事例を抽出。労務単価の据え置きや非合理な減額・指し値など、六つのパターンに類型化した。いずれも労務費が価格調整の原資となり、適正額の確保が難しくなる可能性が高い。結果として『労務費に関する基準(標準労務費)』を著しく下回る額となれば明確に違反行為となるため注意が必要だ。」(『建設工業新聞』2026.01.08)
●「国土交通省は、2024年に改正した建築設計、工事監理の業務報酬基準についてフォローアップし、今後の見直しの方向性を定めた。略算方法に関し、略算表で定める業務量の目安と実際の業務実態に乖離(かいり)があることから、国は業務量について大枠で参考値を示し、業界団体は参考情報を開示することで、個々の建築士事務所がこれらの情報を基に柔軟に実態に合った報酬を計算できるようにする。」(『建設通信新聞』2026.01.13)

労働・福祉

●「働く意思と能力がある人が全員働ける『完全雇用』に近い状態が日本で59カ月続いている。バブル期の50カ月を上回り、高度成長期の148カ月に次ぐ戦後2番目の長さになり、構造的な人手不足が賃上げ圧力を強めている。省人化への投資や人工知能(AI)の活用で人手を補う動きも活発で、足元の雇用環境には変化の兆しもみえる。景気変動などの影響を受けにくい構造的な失業の程度を示す均衡失業率と呼ぶ数値を使い、完全失業率から均衡失業率を差し引いた値を『失業率ギャップ』として算出した。均衡失業率は厚生労働省の一般職業紹介状況や総務省の労働力調査をもとに計算した。PwCコンサルティングの伊藤篤氏によると、失業率ギャップのマイナスは人手不足、プラスは雇用環境の悪化を示す。2021年1月以降、25年11月まで59カ月連続でマイナスが続いている。バブル期の1988年9月~92年10月の50カ月を上回る。新型コロナウイルス禍によって2020年に一時的にプラスに転じた経緯があり、これを除外すれば15年2月から10年超マイナスだったことになる。戦後最長は統計でたどることができる1963年1月~75年4月までの148カ月で、高度凝済成長の時代と重なる。ギャップがマイナスの状態では企業は好待遇で人材を確保する必要があり、賃上げ圧力になる。実際、厚労省の毎月勤労統計をみると、ギャップがマイナスになった1年後の2022年1月以降、名目賃金を示す現金給与総額は46カ月連続でプラスが続いている。足元のギャップの推移からは人手不足感が一服しつつある状況も読み取れる。22年11月と12月にマイナス0.53まで下がったのを底に、25年8月以降はマイナス0.30台で推移し、10月と11月はマイナス0.29まで上昇した。長引く人手不足を背景に、機械に置き換えるための設備投資が進んだ可能性がある。財務省の法人企業統計調査によると、セルフレジの導入拡大などが進む卸売・小売業は25年1~3月期の設備投資額が四半期で初めて2兆円を超えた。企業の求人も低調だ。データ分析のナウキャスト(東京・千代田)によると、パート・アルバイトの求人は24年11月以降、前年比で減少が続く。スーパーなど販売・接客は24年10月から14カ月連続で前年割れした。外食も20%前後の落ち込みが続く。正社員の求人も25年11月は職種別の22分類のうち建設や福祉を含む14職種で前年を下回った。人手不足が深刻とされた分野でも需給が緩み始めた可能性がある。」(『日本経済新聞』2026.01.07)
●「2025年11月の実質賃金は11カ月連続のマイナスとなった。25年は3%を超える物価上昇が続き、賃上げが追いついていないためだ。政府は電気・ガス代への補助復活といった政策効果で26年度はプラスに転じると見込む。円安を踏まえた食料品の値上げなどで物価が上振れすれば、マイナス圏に戻るリスクは残る。」(『日本経済新聞』2026.01.09)
●「専門スキルを持つ現業職『ブルーワーカー』で賃上げの勢いに格差が出ている。2024年の所定内給与を20年と比較すると、タクシー運転手は4割増える一方で、板金従事者など減少する職種もあった。海外では能力次第で厚待遇を得られる現業職を見直す動きがあるが、スキル可視化が不十分な日本では盛り上がりに欠ける。厚生労働省の集金構造基本統計調査で所定内給与を比較した。伸び率が顕著なのが『タクシー運転者』で40%増えた。とび職・鉄筋工・型枠工など『建設躯体工事従事者』は18%増え、事務職を含む全体平均(7%増)の伸びを上回った。一方で警備員(3%増)や板金従事者(1%減)は平均を下回った。…ブルーワーカーはスキルが認められれば高収入を得やすいとあって海外で見直し機運が高まっている。日本でも建設現場で働くとび職や鉄筋工、型枠工など一部の技能職で賃金が上がり始めた。ただ、タクシー運転手などを除いて人材流出に歯止めがかからない。違いは入職後に持続的に高年収を得られる『夢』を描きにくいことだ。その理由として、建設現場の現業職で構成する全国建設労働組合総連合(全建総連)の松葉晋平・技術対策部長は『能力の可視化が遅れていることが大きい』と見る。職人が自分のスキルの市場価値が分からず、適正賃金が見定められない。賃金制度に詳しい青山学院大大学院の須田敏子教授は『英国やドイツは職業資格が細かく可視化され、賃金に自然とひも付く。日本は職業資格が未発達でスキルの可視化ができておらず、交渉力もうまれない』と語る。 日本の建設業界ではスキルの可視化が不透明な危機感から、19年に建設キャリアアップシステム(CCUS)を設計して導入した。工事経験などを記録する仕組みだ。ただ、各職種4段階の認定レベルは経験年数と資格などを示すにとどまる。」(『日本経済新聞』2026.01.11)
●「技能実習に代わる外国人材の新たな在留資格『育成就労』の運用の詳細を検討していた政府の有識者会議が終了し、特定技能と一体で策定する受け入れ分野別の運用方針が月内に閣議決定する見通しとなった。建設分野は適正で円滑な受け入れに向けた独自の上乗せ措置を充実させ、他産業以上に中長期的なキャリア形成や地域共生に力を入れる。外国人材の呼び込みにとどまらず、地域で長く活躍・定着してもらうための仕掛けを、国土交通省と関係機関が連携しながら矢継ぎ早に打ち出すことになりそうだ。建設分野の運用方針は2028年度末までに受け入れる外国人材の上限人数を、両制度の合計で19万9500人(育成就労12万3500人、特定技能1号7万6000人)と設定した。人手不足になると想定する人数から、国内で確保できる人数や生産性向上分を差し引いて算出した。」(『建設工業新聞』2026.01.14)

建設産業・経営

●「2026年がスタートした。大型のM&A(企業合併・買収)が相次いだ前年の流れを受け、業界再編の加速を予感させる一年になりそうだ。ゼネコン各社のトップは、M&Aや資本・業務提携などのアライアンスを推進する姿勢を示す。旺盛な建設需要に対し、人材や技術の相互補完で対応し、持続的な成長へと導く将来像を描く。…多くのゼネコンは豊富な手持ち工事を抱える。今期の中間決算では過去最高の売上高や営業利益を更新し、通期業績予想の上方修正も相次いだ。鹿島は、安定した需要が見込まれる医療・教育分野に着目し、24年に米建設会社ロジャース・ビルダーズ(ノースカロライナ州)を買収した。現中期経営計画では、M&Aを通じた事業拡大を推進する。…大林組は本年度、米建設会社GCON(アリゾナ州)を買収した。データセンター(DC)や半導体製造施設の集積地である同州で、AIの普及を背景に急拡大する新設・改修需要を取り込む。国内では、水やエネルギー、食料といった分野にも注視する。…大成建設は、エンジニアリング事業の強化を最重点課題に位置付ける。…清水建設は、これまでにシンガポールの高級内装工事会社や、米国の建築物改修・内装工事会社を買収した。グループ会社の日本道路を完全子会社化し、受注や技術開発でシナジーを発揮しやすい体制を整えた。…竹中工務店は、竹中土木などのグループ会社や、協力会社組織である竹和会との連携強化を重視する。…準大手ゼネコンも同様に、ほとんどの企業が成長戦略の一環としてM&Aやアライアンスに前向きな姿勢を打ち出す。多くのトップは30年ごろまで旺盛な建設需要が続くと見通す一方で、人口減少による中長期的な市場縮小も見据える。ここ1、2年で適正な価格や工期を反映した契約が着実に浸透し、受注時の採算管理徹底によって収益性も改善している。こうした追い風を持続的成長につなげるためにも、生き残りを懸けた業界再編の動きは、今後さらに加速しそうだ。」(『建設工業新聞』2026.01.05)
●「不動産協会(不動協、吉田淳一理事長)は、建築費の高騰や人手不足などが都市再生の障壁になっているとして、建設業界や国と連携して対応に当たる。7日に開いた不動産流通経営協会との合同賀詞交歓会で、吉田理事長が今後の取り組み方針を明らかにした。吉田理事長は建築費の上昇や人手不足について『国土強靭化や国際競争力の強化、インフラの再整備などにも影響が出る非常に重要な問題だ』との認識を示した。建設業界、国と協力して対応することで『10年後、20年後を見据えてサステナブルにまちづくりを推進できるよう、できることから実行に移していく必要がある』と述べた。不動協は建築費の高騰で市街地再開発事業などが相次いで延期や中止になる事態を受け、2025年11月に日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)に申し入れ書を提出。担い手や労務費の確保などに連携して取り組む考えを示した。」(『建設工業新聞』2026.01.08)
●「人手不足や、積み重なるコストアップで疲弊し、中小建設企業の倒産件数の増加に歯止めが掛からない。帝国データバンクが13日に公表した『2025年(1月-12月)建設業倒産(負債額1000万円以上)』は、件数が前年比6.9%増の2021件となり4年連続で前年を上回った。13年の2347件以来、12年ぶりに2000件を上回り、10年間で最多件数となった。負債総額も5.0%増の2036億4400万円に増加している。」(『建設通信新聞』2026.01.14)
●「日本企業による海外建設受注が堅調だ。海外建設協会(海建協、佐々木正人会長)がまとめた海外建設受注実績(速報値)によると、2025年度上半期(25年4~9月)は前年同期比62.6%増の1兆6178億8300万円だった。半期実績は22年度から1兆円規模で推移しており、25年度上半期は02年度以降で最高となった。アジアと北米で大型案件の受注が増え、全体を押し上げた。公共工事の受注増加も目立った。」(『建設工業新聞』2026.01.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「首都圏の新規マンション供給は、好立地の高額マンションに限定される傾向が今後さらに強まりそうだ。住宅供給の先行指標となる東京都内の共同住宅の着工戸数が減少すると同時に、1戸当たりの工事費予定額(戸当たり工事費)の上昇が続いている。一方で、これまで増加傾向が続いていた千葉県や神奈川県では供給戸数が減少しており、高額でも需要が見込める都心に新規マンション供給が一層集中する。」(『建設通信新聞』2026.01.05)
●能登半島地震と豪雨災害で被災者生活再建支援金を受給した世帯のうち、住宅再建のめどが立つなどした場合に支給される追加分を受給した世帯が、石川県の能登6市町で約3割にとどまることが31日、県への取材で分かった。地震から1日で2年。高齢の被災者が多い上、業者不足や建築費高騰で再建が容易に進まない実態が浮かんだ。同支援金は、住宅の被災程度に応じて最大100万円支払われる基礎支援金と、新築や補修など再建方法に応じて追加で最大200万円支払われる加算支援金で構成される。加算支援金の受給者割合は、再建の進み具合を示す目安とされる。県によると、大規模半壊以上となり、基礎支援金を受給したのは2025年11月末現在、6市町で1万1059世帯。このうち加算支援金を受給したのは3247世帯(29%)。この割合は輪島市22%、珠洲市25%で奥能登地域の遅れが目立つ。6市町以外の県内自治体は44%だった。(『しんぶん赤旗』2026.01.01より抜粋。)
●「発生から2年が経過した能登半島地震で災害関連死の手続きの遅れが深刻化している。審査待ちが200件を超え、遺族の負担感は強い。背景にあるのが認定する自治体側の体制不備だ。首都直下地震で災害関連死が4万人規模となる恐れかあるなか、審査の迅速化が求められる。2024年元日の地震で甚大な被害のあった石川県。避難生活のストレスや持病悪化などで亡くなる災害関連死の申請が現在も続いている。被災した6市町への取材によると、申請を受けてから審査が始まっていない『審査待ち』は25年12月4日時点で242件だった。能登半島地震の災害関連死は同26日時点で石川、富山、新潟の3県で470人。今後さらに膨らむ可能性がある。石川県輪島市では当初、申請からおよそ2~3カ月で認定されるケースがほとんどだった。徐々に申請が増えて対応が追いつかなくなり、現在は10カ月ほどかかるという。担当者は『地震から時間がたつほど審査は長引く』と明かす。要因の一つに、自治体側の対応が追いついていない現状がある。遺族から申請を受けた市区町村は審査会を開き、災害と死亡との因果関係を確認しなければならない。石川県内では金沢市以外の市町が月2回、医師や弁護士ら計5人で構成する『合同審査会』を開催している。自治体側はノウハウを共有しつつ判断のばらつきを避けられる利点があるが、複数市町の申請を扱うため、1回に審査できる件数に限りがある。…審査に出す資料も煩雑だ。関連死に当たるかどうかは画一的に判断できず、遺族は①死亡診断書②死亡に至る経緯③通院・介護の記録――など多岐にわたる資料を用意する必要がある。」(『日本経済新聞』2026.01.03)
●「中部電力の浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の安全審査に使う申請データで不正が発覚した。『捏造(ねつぞう)に近い事案』(原子力規制委員会幹部)で浜岡原発の安全性に対する評価が根本から覆りかねない。浜岡原発の安全審査は中断され早期再稼働は事実上、頓挫した」(『日本経済新聞』2026.01.06)
●「東京都は手ごろな賃料で住める住宅の民間整備を促すため、マンションや複合施設の容積率を緩和する新制度を2026年度にも導入する方針だ。近隣の市場相場の8割以下の賃料を目安とし、整備する戸数の規模などに応じて床面積を上乗せする仕組みを検討している。都心の賃料が高騰するなか、国内初とみられる枠組みを通じて子育て世帯などが住みやすい住宅環境を整える。容積率は敷地面積に対する延べ床面積の割合で、上限を緩和する仕組みがある。開発事業者にとっては容積率が高いほど採算性が高まる。不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)によると、25年11月の23区の分譲マンション賃料は最高値を2カ月連続で更新した。民間に割安物件の整備を促し、子育て世帯の都外への流出を防ぐ。都は都心部などで良質な住宅を整備したり、古いマンションを建て替えたりする場合に容積率を最大で200~500%程度緩和する複数の制度をもつ。周辺の相場より安い賃料の住宅を整備すれば、床面積の上乗せを認める方針だ。使う制度や場所により上乗せ幅は異なる。例えば、敷地面積が4000平方メートルの物件で容積率を100%上乗せすると、延べ床面積は単純計算で4000平方メートル増える。仮に増えた床面積で従来よりも50戸多く整備する場合、一部の住戸の家賃を8割以下に設定しても、物件全体として開発事業者は従来の利益水準を確保できる。」(『日本経済新聞』2026.01.12)

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