定期総会議案書

第36回定期総会 議案書(概要・抜粋版)
日時:2024年12月21日
会場:建設プラザかながわ(オンライン併用開催)
1.2024年度 活動経過報告
2.2025年度 活動方針


2024年度 活動経過報告


Ⅰ. この1年間の重点活動

 この1年間、建設産業・労働・経済の動向を踏まえて活動を進めてきた。以下に今年度の主要な活動について報告する。


1.調査研究活動
〇およそ10年に1度実施している4都県(東京、埼玉、千葉、神奈川)の建設労働組合の基本調査を進めた。2024年度は、9回の実行委員会を開催し、アンケート結果報告書を作成した。今後、ヒアリング調査結果を検討し、情勢分析などを踏まえて報告書作成を進める予定となっている。
〇賃金アンケート実態調査
 賃金アンケ―ト調査については、全国建設労働組合総連合、全建総連東京都連合会、埼玉土建一般労働組合、神奈川県建設労働組合連合会、千葉土建一般労働組合から賃金アンケートの入力、分析業務等を受託した。
〇その他の主な受託調査は以下の通り。
 ・埼玉土建一般労働組合「2024年賃金討議アンケート」入力・集計・分析業務
 ・千葉土建一般労働組合「どうする週休2日ぶっちゃけアンケート 集計及び分析」
 ・東京土建一般労働組合「報酬月額算定基礎届に基づく賃金実態調査」
 ・東京春闘共闘会議「新聞折り込み求人紙による全都募集時給調査」

2.財政
〇財政に関しては、支出総額がほぼ予算通りであったのに対して、収入が13%増となったが、繰越金を取り崩すこととなった。調査研究収入の他、奨励金による収入増により、当初予算の赤字幅を大きく削減することとなったが、基礎的な収入と支出の均衡が大きく崩れており、財政改善対策が大きな課題となっている。


Ⅱ.研究・調査活動



1.共同研究会等
1)建設産業労働政策委員会

 2024年度は開催しなかった。
2)首都圏建設労働組合基本調査
 本調査の趣旨は、今後、建設労働組合がどのような運動、取り組みを進めて行くかを検討するための出発点となる組合員の実態をより的確に把握することであり、およそ10年に1度の頻度で実施しているものである。
 アンケート調査報告書が間もなく完成予定であり、今後、調査報告書の作成に向けて取り組む。

2.受託調査活動等
1)賃金・生活実態アンケート調査の集計と分析
 2024年度は、全国建設労働組合総連合および全建総連加盟組合から賃金アンケートの集計・分析業務を受託した。
2)埼玉土建一般労働組合「2024年賃金討議アンケート」入力・集計・分析業務
 組合員の要求賃金についての討議を進める上で実施している賃金討議アンケートの入力・集計作業を受託した。
3)千葉土建一般労働組合「どうする週休2日ぶっちゃけアンケート 集計及び分析」
 千葉土建一般労働組合が、組合員を対象に実施した「どうする週休2日ぶっちゃけアンケート」(2024年)について、集計・分析作業を行なった。
4)東京土建一般労働組合「報酬月額算定基礎届に基づく賃金実態調査」
 組合員のより正確な賃金実態を把握するために実施された「報酬月額算定基礎届による賃金調査」の集計、分析を行った。
5)東京春闘共闘会議「新聞折り込み求人紙による全都募集時給調査」
 東京春闘共闘会議が、東京都の職種別時給などを集計・分析し、自治体や東京労働局などとの交渉や、地域の地場賃金引き上げの資料とすることを目的として実施されているもの。研究所では、求人紙等を元にした入力・集計業務を受託した。
6)日本共産党東京都議会議員団「都営住宅申込者実態調査」
 都営住宅は希望者が募集戸数を大きく上回る状態が続いているが、新規建設など、都営住宅の戸数を増やす対策がとられていない。しかし、都営住宅の使用希望者は、経済的困難だけでなく、一人親世帯、高齢者世帯、障碍者であるなど、様々な要因から、公営住宅を必要としている。そこで、都営住宅の使用希望者の実態を把握するための調査を実施する。

3.研究委員会
 2024年度は、以下の通り開催した。
<開催状況>
 第1回研究委員会
 日時:2024年7月24日(水)15時~17時
 会場:建設プラザかながわ会議室(オンライン併用)
 講演①
  講師:須沢健太郎氏(全国建設労働組合総連合住宅対策部主任書記)
  テーマ:「全建総連65周年事業 韓国視察の成果等について」
 講演②
  講師:呉 学殊先生(労働政策研究・研修機構 特任研究員)
  テーマ:「韓国の建設産業の現状と外国人材受入の取り組み」

4.建設政策基本問題研究会
 本研究会は、建設産業・労働政策など重要な基本的政策課題について討議し、研究所の基本的な考え方をまとめることを目的に設置されている。必要に応じて開催されることになっており、今年度は、開催しなかった。

5.研究プロジェクト
プロジェクトの設置
 建設投資が減少から増加に転じて推移する中で、中期的にみて、建設産業には様々な変化が現れている。建設産業政策は淘汰策から担い手確保策へと変わり、公共工事は依然として新規事業が多いものの、維持・補修事業の重要性が説かれるようになってきている。
 建設労働をめぐっても、国、業界を挙げて担い手確保に向けた処遇改善の取り組みが行われるようになり、実際、賃金水準も少しずつ上昇傾向で推移してきている。こうした様々な変化に伴い、建設産業は、今後、どのような産業となっていくべきか、改めて検討することが求められている。
 そこで、学術的な視点から今後の建設産業についての研究を行う「建設産業研究会」(仮)を設置したい。研究会には、理事や研究委員、調査に参加いただいている研究者などにご協力いただき、建設産業に関わる諸課題について、様々な視点から研究を行うこととする。

6.海外建設事情調査研究
 諸外国の建設産業や建設労働について、国際建設労組から『建設政策』にご寄稿いただくこととなった。既にご寄稿頂いており、翻訳し『建設政策』219号に掲載予定である。


Ⅲ.情報収集・提供活動


1.情報提供活動

 団体会員を中心に随時、建設産業の動向に関する情報提供を行った。
2.ウェブサイト
 最新の情報を掲載するよう心掛けてトップページの更新(「お知らせ」や「建設政策」最新号の紹介)を適宜行った。ホームページのメンテナンスを課題としていたが、予算の関係などから、更新には至っていない。


Ⅳ.討論会・シンポジウム、セミナー


 2024年度は、研究所単独での討論会、シンポジウム、セミナー等を主催しなかったが、後述の通り、他団体と共同でセミナー、集会を共催、協賛した。


Ⅴ.講師活動及び執筆活動、他団体との共同の活動



1.講師活動

 会員団体、会員外団体への学習会や講演会などでの講師活動を行った。講師は理事を中心に派遣した。
 八戸市、全建総連関東地協の企業交渉団会議、全建総連東京都連合会、東京土建一般労働組合、全日本建設交運一般労働組合など、主に全建総連傘下の首都圏の組合での講演会、会議等に講師を派遣した。
2.執筆活動
 建設労働組合の機関紙の他、『全国商工新聞』、『日本労働年鑑』、その他雑誌等に執筆を行った。
3.他団体との共同の取り組み
 2024年度は、下記のセミナー、集会を共催、協賛した。

 <シンポジウム 能登半島地震の被災実態と復旧・復興の課題>
 主催団体:NPO法人建設政策研究所/国民の住まいを守る全国連絡会/日本住宅会議・関東会議/住まいの貧困に取り組むネットワーク
 日時:2024年6月15日(土)13時30分~16時
 会場:けんせつプラザ東京会議室(オンライン併用)


Ⅵ.第30回全国建設研究・交流集会


 第30回全国建設研究・交流集会は、2024年12月8日(日)~9日(月)、「いのちと安全をまもる地域建設産業の持続可能な発展に向けて」をメインテーマに、マロウドインターナショナルホテル成田(千葉県成田市)で開催された。参加者数は219人であった。
 研究所は、実行委員長団体、事務局長団体として参加し、企画立案、準備と当日の運営、会計、関係者への呼びかけなどの役割を担った。


Ⅶ.出版活動



1.「建設政策」誌
1)各号の企画と誌面

 今年度は213号から218号までを発行した。情勢に応じた企画・紙面づくりを目指した。特に、コロナ禍で制限されていた取材記事を可能な限り増やし、現場に近い視点からの構成を心掛けた。
 特集は、213号「第29回全国建設研究・交流集会」、214号「都市再開発の問題点」、215号「令和6年能登半島地震~被害の実態と復旧の課題」、216号「建設業の2024年問題~働き方改革と賃上げの行方」、217号「公共事業は国民視点になっているか」、218号「大阪・関西万博と夢洲開発をめぐる諸問題」であった。
2)表紙
 表紙については、引き続き村上久美子さんに写真をご提供いただいた(183号~)。
3)読者からの意見・歳時記募集
 個人読者にアンケートを配布し、意見をお寄せ頂いた方への粗品進呈をアナウンスして意見募集を行った。

2.「建設政策研究」誌

 今年度は発行しなかった。


Ⅷ.組織と財政基盤


1.研究所の組織体制と運営
1)組織運営

 2024年度の理事会役員は25名。理事会での審議項目は、①情勢についての議論、②審議事項、③確認事項で構成し、現在取り上げるべき課題や会員団体等の現状などについて討議する時間を確保し、併せて『建設政策』の企画・構成について検討する機会を設けた。
 今年度の理事会はオンライン併用で6回開催した。
2)体制(役員、事務局、研究員)
 役員は、理事長、副理事長、専務理事、理事、会計監査・監事という体制を基本として運営した。大きな問題は生じなかった。事務局は、5名(専務理事1名、雑誌・調査研究3名、会計・庶務1名。出向研究員1名を含む)。
 また、非常勤研究員・調査員に関しては、名体制で、方針では、若手中堅研究者や現場経験の豊富な人材など幅広く人材の確保に努めるとしていたが、予算の関係もあり、新たな人員獲得にはいたっていない。
3)事業内容等検討委員会
 本委員会は、近年、赤字の当初予算編成が続いていることから、現状を確認、精査するとともに、持続可能な運営に向けて検討を行うことを目的として設置している。
 委員会で現状と今後の活動を踏まえて検討した結果、以下の内容を理事会に提案した。

<事業内容等検討委員会で決定した理事会への提案内容(一部抜粋)>
 ○2025年11月から適用する団体会費を1,000円引き上げ12,000円とする
 ○会費の引き上げについては、財政状況等を確認し、2025年度以降も継続的に検討する
 ※2015年頃~2025年度予算(案)までの基礎的収支について検討した結果、赤字幅を
4)理事体制検討委員会
 2024年9月11日に開催し、次年度の役員体制について検討し、理事会に提案した。
5)事務局員・研究員の待遇改善等についての検討委員会
 2024年9月11日に委員会を開催し、2024年10月の最低賃金の引き上げに伴う採用時の時給および月給の引き上げについて検討し、理事会に報告した。理事会で「事務局員の基準賃金に関する細則」を改定し、時給及び月給を引き上げた。

2.支所の活動
1)関西支所

 年間の研究課題として「建設労働政策」の議論を深めることとし、「建設労働政策研究会」を2回開催したが、取りまとめまでいかなかった。
 第23回関西建設研究・交流集会の開催に向けて、前回の総括会議を行い次年度の開催に向けて、事務局会議を重ね、多くの単組が参加して交流できる集会になるように、議論を続けている。
 「近年の災害について」と題して続けてきた、学習会は6回開催した。うち1回は、1月に発生した能登半島地震の復興の現状についての視察を実施し(9月末)、遅れている復興の状況や前の週に発生した豪雨災害の状況を確認した。
 また、「防災まちづくり研究会」についても、コロナ禍で活動が休止状態となっており、研究の再開を探っている。
2)北海道センター
 札幌を中心に、公契約運動に資する調査研究活動を進めてきた。世田谷区公契約条例の調査を行ったほか、2022年に実施していた埼玉県越谷市公契約条例の調査結果の取りまとめを行った(下記参照)。
 九州センター準備会への訪問も兼ねた福岡県直方市の調査は実施できなかったが、2025年には実施したい。
 労働者調査(建設、指定管理)や事業者調査は実施できなかった。

 (1)センターの活動・公契約条例の調査
 (2)「札幌市公契約条例の制定を求める会(代表伊藤誠一弁護士)」(2012年2月~)
 (3)「旭川公契約条例研究会(前身・旭川ワーキングプア研究会、代表小林史人弁護士)」(2014年3・4月~)
 (4)情報発信


3)九州支所設立に向けた取り組み
 九州支所設立準備会では、引き続いて九州に支所を設立することを目指して、毎月第一金曜日の夜に、福岡県生公連、福岡県労連、福岡県国公、国土交通労組など労組の政策立案メンバーを中心に定期的に幅広く情勢認識の一致を諮り、政策提言に向けた会議を開催している(開催回数は、2024年11月時点で、103回)。
 2024年度には福岡県生公連とともに建設産業民主化を目指して取り組みを進めるため、改正された担い手3法の実効性を担保する役割を担う「建設Gメン」の欺瞞性について九州としての考え方をまとめた。
 また大手ゼネコンに優位な指標で構成されている経営審査事項や、過去の実績が大きく評価される総合評価制度の問題点、実績に偏重した総合評価を支える工事成績評定など、行政実務の内容についても検討を進めて、改正案をまとめようとしている。
 熊本県建設労組の意向や、福岡県内での取り組みは進展しつつあるが、やはり労組役員が中心であり研究を生業とする学術者・教員などの個人参加には至っておらず、労組の要求に固定化した内部議論にとどまり、シンポジウムの開催や公開の研究報告会、広報、機関紙などの発行もなく今後の課題としたい。

3.会員の状況
1)団体会員
 拡大目標は3団体であったが、新規加入団体の獲得には至らなかった。
2)個人会員
 拡大目標であった5人の入会者は確保したが、それを上回る退会者により個人会員数の減少となった。会員構成の高齢化に伴う退会が続いており、個人会員数確保が喫緊の課題となっている。
3)「建設政策」誌の定期購読部数
 第35回総会での拡大目標には及ばなかった。

4.財政運営
1)2024年度の収支
 収入は3,452万7,548円(23年度3,219万4,104円、233万3,444円増)で、支出は3,539万7,034円と予算を上回る結果となった。
2)根本的な財政状況の改善が課題

 2024年度は、年度当初の予定額よりは縮小したものの、繰越金を取り崩すこととなった。
 基礎的な収入となる会費収入が継続して減少している一方で、支出については、最低賃金の引き上げや定期昇給に伴う人件費の増加が続いている。新規調査の受託や会費の引き上げ、支出のさらなる精査などの対応が必要である。



2025年度 活動方針


Ⅰ.中期的な課題と活動方針



 設立の趣旨および定款に則って、研究所が中期的に取り組むべき課題は多岐に亘っている。建設産業をめぐる現状を踏まえ、当面、下記の中期的な課題に基づいて、調査・研究活動と体制、財政の強化を進めていく。また、情勢の変化に応じた課題については、随時取り上げることとする。
 1.建設労働者の賃金・労働条件の向上に向けて
  ・建設労働者の賃金形態、働き方に関する諸課題
  ・建設キャリアアップ・システムの実態・課題の把握
  ・団体交渉機構づくりと労働協約締結に向けての課題
  ・公契約条例制定自治体の拡大、公契約法の制定に向けて
  ・移住労働者の受け入れ拡大と建設労働組合の運動課題
  ・建設労働者の安全衛生対策
 2.地域建設産業振興に向けて
  ・地方自治体の建設業振興策、建設産業政策策定に向けて
  ・地域建設業の受注確保・経営安定に向けた仕組み等の検討
  ・公共事業の入札・契約制度のあり方
  ・国・地方の財政政策の課題
 3.建設市場の中期的動向の把握
  ・建設市場の動向把握
 4.建設産業構造の改善に向けて
  ・重層下請構造の解消に向けた課題
  ・産業組織構造の検討
 5.安全な国土形成・利用に関する課題
  ・頻発する自然災害に対する備えと体制強化に向けた課題
  ・インフラの老朽化、公共施設統廃合等に対する政策課題
  ・都市形成に関わる課題
 6.住宅政策に関する課題
  ・住宅政策の変化とその課題
 7.体制と財政の強化
  ・事務局員、研究員の確保と待遇の改善
  ・財政基盤の確立


Ⅱ.2025年度活動の重点方針


 2025年度の活動は、建設産業と政治・経済をめぐる情勢を踏まえ、下記の点に重点を置いて取り組む。

〇調査・研究の重点
 ・およそ10年に1度実施している首都圏建設労働組合基本調査の報告書を作成する。
 ・全国建設労働組合総連合、首都圏4組合の賃金アンケート調査について、調査票、分析項目の改善等を通じて調査のさらなる充実を図る。
 ・新規調査の受託による収入増を図ることが大きな課題となっていることから、会員団体の課題等に対応した企画提案力の強化を図り、課題の解決、改善に向けた調査等の実施に向けて取り組む。
〇財政状況がひっ迫していることから、新規受託事業の確保などの収入増を目指すとともに、経費等の削減に努める。また、事業継続に向けて、会員の拡大や会費の引き上げ、合理化など、今後の研究所の安定的な運営に向けての対策を検討する。


Ⅲ.研究・調査活動


1.共同研究会
1)建設産業労働政策委員会
 「建設産業労働政策2020」の改正など、必要に応じて開催を検討する。
2)首都圏建設労働組合基本調査
 アンケート調査の結果については、概要を報告書にまとめた。今後、ヒアリング調査結果、建設労働組合の運動や取り組み課題などについて検討し、報告書を作成する。

2.受託調査活動
1)賃金アンケート調査の集計と分析
 これまでの賃金・生活実態アンケートの集計と分析の成果をふまえ、建設労働者の賃金政策により資するように集計と分析を行っていく。
2)報酬月額算定基礎届に基づく賃金実態調査
 2025年度も継続して取り組む調査についての受託を働きかける。
3)「2025年賃金討議アンケートの分析業務」
 毎年行っている標準賃金の設定に向けた「賃金・仕事生活をめぐる討議」において実施されているアンケートの入力・集計・分析業務について受託に向けて働きかけを進める。
4)新規の受託調査
 会員団体と懇談し、調査ニーズを把握した上で、企画案を提示し受託事業の確保をめざす。特に、調査研究費の収入確保が喫緊の課題となっていることから、現状の諸課題や時勢に見合った具体的な調査企画を提案し、受託に向けた取り組みを進める。

3.研究委員会
 研究委員会は研究所の調査・研究活動の要であり、研究会や研究プロジェクト等と連動した研究所の考え方、政策提言を最終的に確認する場として位置づいている。
 2025年度は、産業動向を踏まえたテーマや海外情勢などを対象とするほか、研究所で実施した調査結果報告なども併せて検討する。また、テーマによっては専門家をお招きするなど、多様な企画を検討するとともに、テーマによっては広く参加者を募り、公開研究会とすることも検討する。
 研究所の認識を深め、会員、建設産業関係者・団体等に発信していくために下記のように進めていく。
 1)研究テーマは、重点方針に示したテーマの他、研究所で行った調査結果、建設産業・労働、公共事業を取り巻く情勢や政策動向など、幅広く取り上げる。
 2)研究所の研究活動を会員とともに進めていくために、幅広く会員(個人、団体)にも参加してもらえるよう、公開研究会の開催を検討する。テーマに応じてそれぞれから取り組みや課題などを報告いただき、会員とともに多面的な検討と討論を行うにする。
 3)研究委員会で議論を深めた成果を、政策提言の発表や出版物の発行に結び付けるように努める。また、それらの成果を、公開討論会やシンポジウムの開催、建設産業に関わる各種団体(業界、労働組合、行政等)に広く発信していく。

4.建設政策基本問題研究会
 引き続き建設政策基本問題研究会を設置する。本研究会は、定款上定めのある組織ではないことから、メンバーや開催回数等を固定せず、情勢に応じて議論が必要なテーマなどが生じた際に集中的に討議する場として活用する。

5.研究プロジェクト

 2024年度、第35回定期総会、および理事会での検討を踏まえて、研究者理事を中心として「建設産業研究会」を設置した。2024年度は、研究会の進め方や課題整理の他、先行研究を行った。
 2025年度も引き続き先行研究等を実施し、今後の建設産業についての研究活動を進める。

6.海外建設事情調査研究
 諸外国の建設産業や建設労働に関わる諸課題の動向については、文献紹介や研究会の開催など、随時、取り上げることを検討する。


Ⅳ.情報収集・提供



1.情報収集

 建設産業に関わる情報を収集する。
2.情報提供活動
 収集した情報については、適宜、会員団体等に提供していく。
3.ウェブサイト
 研究所からの行事のお知らせや調査研究活動の成果など最新の情報の掲載、更新を怠らずに行う。また、ホームページ作成から一定期間が経過していることから、ホームページのメンテナンスについても検討する。


Ⅴ.討論会・シンポジウム、セミナー


 研究所が政策提起を行った際、また、建設行政や建設産業、建設労働にかかわる重要な課題が生じた場合は公開討論会等を開き、テーマに対する研究所の考えを広め、意見交換を通じて認識を深める。
 その他、情勢に応じて理事会で検討する。


Ⅵ.講師活動及び執筆活動、他団体との共同の活動


1.講師活動

 研究所の研究・調査活動の成果や問題意識等を広げ、多くの団体で討論してもらうため、講師活動を重視していく。相手からの依頼にとどまらず、研究・調査等の内容は積極的に報告の機会を作るように働きかけていく。
2.執筆活動
 諸団体の機関誌や月刊誌などに積極的に執筆活動を行い、研究所の研究・調査活動の成果を広げていくことに努める。
3.他団体との共同の取り組み
 共通するテーマにもとづく他団体との共同研究をはじめ、シンポジウム、学習会等に企画、提案も含めて参加していく。


Ⅶ.第31回全国建設研究・交流集会



 第30回全国建設研究・交流集会の総括を踏まえて、第31回集会の方向性に沿って関わっていく。


Ⅷ.出版活動


1.「建設政策」誌
 情勢を的確に反映した記事を読者に提供できるよう、下記のように取り組む。
1)編集委員会
 引き続き編集委員会を設置し、時勢に見合う企画や執筆者の選定等を議論する。編集委員は、前年度の委員を基本とし、研究者に参加してもらうなど、適宜、編集委員会の体制の強化、充実に向けて検討を進める。
2)編集会議
 発行時期に照らして編集会議を開き、特集企画、その他のテーマ、内容等に関して検討する。編集会議は、発行回数に合わせて開催することとするが、必要に応じて、随時、開催を調整する。会議はオンラインを併用して行う。
3)企画・内容
 情勢に合致した特集を組むように努め、研究所の調査・研究成果も適宜発表していく。また、実態や現場の声などを伝えるため、取材やインタビューを積極的に取り入れていく。同時に、求められる政策や運動を支える理論的な側面も重視し、研究者等の執筆記事を掲載するように努め、誌面の充実を図る。
 企画については、より直近の問題や重要なテーマを取り上げ、実態や研究の現状を伝えられるよう、書き手の発掘や柔軟な取材活動で対応していく。また、重要なテーマについては、多面的に捉えられるよう、特集・小特集などで対応していくほか、テーマによっては継続的に取り上げることも検討する。
4)書き手の発掘
 研究所が調査・研究対象としている分野は幅広く、十分に対応できていない分野も少なくないこと、また、研究所の調査・研究等に協力いただける研究者の開拓、新規会員獲得に向けて、近年、必ずしも十分に取り上げられていないテーマについても取り上げていく。
 併せて、ご執筆、記事掲載にご協力いただける研究者等に対しての謝礼等についての規定整備を検討する。
5)表紙
 183号以降、村上久美子氏のご協力により、建築・土木に関連する写真をその視点とともに掲載している。好評を得ていることから、当面、継続して掲載する。
6)誌面レイアウト
 誌面レイアウトについては、図表や写真などを本文に合わせて挿入し、小見出しを設けるなど、引き続き読みやすい誌面を作るための工夫に努める。特に、取材記事やインタビュー記事については、大きめの写真や図表などを掲載するようにする。
 また、より見やすい誌面の作成に向けて、目次のレイアウトなどについても、随時、検討を進める。
7)読者からのご意見・歳時記募集
 引き続き個人読者にアンケートを配布し意見募集を行う。より多くのご意見、歳時記を募集するため、ご意見・投句をお寄せいただいた会員への粗品進呈を継続する。

2.「建設政策研究」誌
 第7号の発行については、研究所の財政状況等を踏まえて検討する。


Ⅸ.組織と財政基盤の確立


1.組織体制と運営
1)組織運営
 調査研究面では研究委員会を研究所の政策提言等を確認する場とし、共同研究会、受託事業等で個別の課題を取り上げる。また、運営面では理事会がその責務を担う。
 各組織の構成と機能、責任者とスタッフの役割(責務と権限)を明確にし、効率的な運営を図る。
2)体制(役員、事務局、研究員)
 役員体制(理事長、副理事長、専務理事、理事、監事)は、現行を基本とする。事務局は5名、非常勤研究員・調査員は、現行1名体制である。
 若手中堅研究者や現場経験の豊富な人材など幅広く人材の確保が継続した課題となっているが、厳しい予算状況にあることを踏まえ、事務局員・研究員の確保については、理事会と「事務局員・研究員の待遇改善等についての検討委員会」を中心に慎重に検討を進める。
3)事業内容等検討委員会
 本委員会は、団体会員に委員を派遣頂き、現状を確認、精査し、持続可能な運営に向けて検討を行うことを目的として、2022年度から設置している。
 最低賃金の引き上げに伴う人件費の増加や印刷料や送料、事務用品費などの値上げが続いていることから、2025年度以降は抜本的な対策が求められている。
そこで、2025年度も引き続き設置し、収支改善、今後の安定的な研究所運営に向けた対策等について検討する。
4)理事体制検討委員会
 次年度の理事体制を検討し、理事会に提案することを目的として、本年も継続して設置する。
5)事務局員・研究員の待遇改善等についての検討委員会
 本委員会は、事務局員・研究員の処遇等についての課題を確認するとともに、処遇改善に向けて検討することを目的としている。本年も継続して設置し、処遇改善等について検討する。

2.研究所支所
1)関西支所
 2025年度は、関西支所の運営体制・研究体制の充実を図ることを第1に、研究課題や企画行事等において建設政策研究所関西支所の特徴(「建設」という専門性)を活かした内容とすることを重視して、「建設労働政策」の研究会を継続して開催する。
 23年に開催した第22回関西建設研究・交流集会は盛況であったため、次の交流集会の開催に向けて事務局会議・実行委員会を実施していく。
 「近年の災害について」と題した学習・検討会を引き続き行い、学習会やシンポジウ
ムなどの開催の検討と、能登半島の視察も企画し震災復興の状況を注視していく。
2)北海道センター
 北海道センターの設⽴(1998年12⽉)から四半世紀となる。
 研究者や労働組合等で構成されているのが建政研のユニークなところであり、なおかつ強みではあるが、長らくこの強みは生かしきれていない。20周年企画として予定され(25周年=2023年の企画に延期され)ていた『建設労働⽩書』の発⾏も、現時点では困難な状況にある。
 そこで、当面、以下のことをテーマに調査・研究を進める。

 〇 公契約条例・運動に関する調査・研究
 〇公共調達・入札制度(とりわけ総合評価落札方式)に関する調査・研究
 〇公務非正規問題・地方政府(行政、議会)に関する調査・研究

 (1)札幌では条例の制定を、旭川では理念型条例から賃金保障型条例への発展を目指す。
 (2)公契約条例の調査・研究を進める。
 (3)地方政府(行政、議会)のあり方が問われている。公共工事の担い手である建設労働に限らず、公共サービスの担い手問題も視野に入れて、調査・研究活動や運動(公共の再生)に取り組むことが必要であることから、今年も、「建設」を軸としつつ、これらの隣接領域問題により積極的に取り組んでいく。
 (4)上記の取り組みや調査・研究成果を『建設政策』にまとめて発信する。
 (5)他の研究機関、労働団体や業界団体、そして議員との交流・連携を積極的に追求する。
 (6)「求める会」や「研究会」と連携して、情報提供や学習会の企画を検討する。


3)九州支所設立にむけて
 九州地方では、毎年、自然災害に見舞われ甚大な損害が発生している。自然災害から国民のいのちを守るための社会資本の維持管理、防災に強い国土づくり、それらを賄う適切な予算規模に関する提言や建設産業を支え適切な国土防災を実現する行政機関のあり方について、現場で働く建設労働者の労働条件改善に向けた運動の取り組み方など、提言の策定に向けて意見交換や学習会等を進めていく。
 2025年は首長や地方議会議員、地方自治体の行政関係者や社会的責任を果たす気持ちを持つ地域の建設企業経営者などと共に経審や総合評価などに関する意見交換をさらに深めて、建設業界全般に幅広い連携を広げ、研究を支援していただくことを目指す。

3.会員拡大
1)団体会員の拡大
 今年度は3団体の拡大に取り組む。
2)個人会員の拡大
 近年、数名の入会者がいるものの、入会者より退会者が多い傾向が続いている。個人会員の高齢化が進んでおり、今後も一定の退会者が継続する見込みであることから、新規入会者確保が重要な課題である。
 今年度は5人の入会者確保を目指す。個人会員の拡大に向けては、団体会員等にも協力を要請し、各種会合等で研究所の案内と入会申込書を配布するなどの取り組みを行う。
3)「建設政策」誌の定期購読者の拡大
 個人会員の拡大と併せて部数の増加に取り組む。

4.財政運営

 2025年度は、収支の改善に向けて、収入の確保、支出の削減に努めるとともに、安定的な運営に向けて、継続して検討を進める。
 具体的には、新規調査の受託や受託費の引き上げ、会員拡大や会員口数の増加、可能な限りの経費削減などに努める。
 新規調査の受託に向けては、団体会員の諸課題等を把握し、時勢に見合った調査企画の提案を進め、会員拡大に向けては、研究所の紹介や会員募集の取り組みを随時行っていく。併せて、行政機関や民間機関等の委託調査研究や助成など、内容を把握し、可能な限り応募等を進めていく。
 また、会計・税務処理は、引き続き公認会計士事務所の協力をあおぎ、建設政策研究所、同関西支所、同北海道センターそれぞれの適切な処理を通して研究所全体で適正な処理を行っていく。


会費の金額

Ⅰ.会費の金額と適用時期(事業年度)

 会費の金額と適用時期(事業年度)について、下記を提案する。

1.2015年11月~2025年10月の会費
 団体会員 1口 11,000円
 個人会員 1口  5,500円
 賛助会員 1口 50,000円

2.2025年11月以降の会費
 団体会員 1口 12,000円
 個人会員 1口  5,500円
 賛助会員 1口 50,000円

※財政状況がひっ迫しており、持続可能な運営に向けて、事業内容等検討委員会や理事会にて、収入増加、支出削減策などを検討してまいります。会費につきましては、財政状況を勘案しつつ、さらなる引き上げも含めて検討を進めます。