中期計画

「第6次中期計画」(2012年1月〜2015年12月))

目 次
1.第6次中期計画期間の目標
2.建設産業に貢献する成果の創出―調査研究、政策提言活動
3.出版活動の充実
4.政策提言・政策論議の場の創出
5.NPO法人としての組織の整備
6.建設産業・労働研究における国内外の連携
7.組織運営の効率化
8.会員拡大
9.財政基盤の強化


1.第6次中期計画期間の目標
1)研究所の目的
 特定非営利活動法人建設政策研究所(以下、研究所)は、建造物を利用する立場と建造物をつくる立場に立った唯一の研究機関として、「災害・環境破壊を起こさない国土づくり、快適な国民生活に必要な社会資本の建設、建設産業界の民主化、建設労働者の労働条件の改善及び中小建設業者の経営の安定及び社会的地位の向上などに関する調査・研究を推し進め、国民と労働者・中小業者の生活に貢献すること」(定款第3条)を目的に活動してきた。この目的の下、第6次中期計画期間においても期間中の目標に基づき、取り組みを進めていく。

2)第6次期間中の情勢的動向
 第6次中期計画での目標を立てるにあたって、同期間中(2012年1月〜2015年12月)の情勢的動向を下記のようにふまえる。
 ○東日本大震災からの集中復興期間(2012年度〜2016年度)中に相当し、震災復興を名目とした政府や財界による国家戦略
  が押し進められ、被災者本位の復興との間で対立軸が先鋭化する。
 ○道州制をみすえた「地域主権改革」、社会保障と税の一体改革など、国家のあり方と財政抑制、地方自治の機能不全、ひい
  ては国民の「共助」による自己責任化が進み、社会保障の充実や最低生活水準など国のナショナルミニマムとの関係で
  国民運動が強まる。
 ○国家財政・地方財政の抑制、民間設備投資の削減(多国籍企業の再配置)の影響を受けて、建築土木投資の減少方向の
  下で、国内建設産業の再編・淘汰が強まり国土交通省「建設産業の再生と発展のための方策2011」施策の功罪が顕在化
  する。
 ○地球温暖化、気象異常、地震の活動期など自然災害が多発する中で、自然再生エネルギーへの世界史的転換、食糧危機、
  水利用の変更、国土保全、建築土木の基準変更のもとで、新しいまちづくり、国土利用の方法と検討、変更が求められて
  いく。このなかで、東日本大震災の教訓を活かした日本の防災型国土づくりの戦略が問われる。 
 ○民主党による財界と米国に追随した国家戦略の矛盾が露呈し、自民・民主の二大政党制の破たんが明らかになり、新たな
  国民本位の政治を求めてさまざまな試行錯誤が繰り返される。その中で、国民のフラストレーションを巧みに利用した右翼
  再編の可能性も考えられる。
 ○欧州の債務問題、米国の厳しい経済財政状況など先進資本主義国の経済危機の深化、一方で新興諸国の高度経済成長に
  よる新たな台頭など、世界経済の不安定な動向が続く。また、過剰生産と過少消費のもとで一部に集中した巨大な金融
  資産による投機は世界経済をいっそう混乱に陥れる。そういった中で、ポスト新自由主義経済政策の確立、内需拡大と
  貿易バランスの確立、経済格差是正が追求される。
 ○この間、世界各国のリーダーが選挙等により交代(米国、ロシア、韓国の大統領選、中国の指導部交代、台湾の総統選など)
  する可能性があり、またアラブ諸国や東南アジアにおける政治の民主化をめぐる動きが強まる。富の一極集中や軍事独裁、政
  治腐敗等への諸国民の運動、米国に端を発したオキュパイ運動など、雇用の拡大、貧困・格差の是正、軍事費削減、
  自由と平等、平和な国家づくりなど、それぞれの国・地域で国民生活を守るたたかいがさらに広がり、世界的規模での
  政治・経済の変革 の流れのネットワーク化が進む。

2 建設産業に貢献する成果の創出―調査研究、政策提言活動
1)テーマと体制
(1)テーマ
 ○地域建設産業の持続的発展にむけた法制度・条件整備のあり方
  自治体の入札・契約制度のあり方
  環境と省エネルギー・創エネルギーに配慮した仕事づくり
 ○建設労働者の賃金・労働条件の向上を実現するルールづくり
  個人請負就業者の就業条件改善の戦略
  建設労働者の社会保障の制度設計
  建設労働者の労働安全衛生の向上にむけた課題
  労使交渉機構づくりと産業別労働協約にむけた課題
  技能育成の仕組みづくりと労働者供給事業のあり方
 ○国民・住民に安全・安心を提供する災害に強い国土・地域づくり
  インフラ整備にかかわる行財政制度のあり方(東日本大震災復興事業を含む)
  PFI・PPP等の実態解明と公共性を担保したインフラ整備のあり方
 ○住宅政策と地域住宅産業に関する課題
 ○建設産業のグローバル化に対する政策課題

(2)体制
 上記テーマの具体的な検討は常設の研究委員会、プロジェクト・研究会、および団体ごとの政策的課題の検討は共同研究会で行なっていく。共同研究会については、関係諸団体に積極的にはたらきかけていく。また、会員団体などから委託調査を継続的に受託し、上記テーマの検討に役立てていく。
 運営にあたっては、研究委員会やプロジェクト、共同研究会によって効率的、機動的に取り組んでいく。いずれも責任者の責任の下、事務局を適切に配置し、責任者と事務局で滞りなく運営していき、確実に成果をあげる。

2)研究者の確保と研究水準の向上
 取り組むテーマに照らし合わせて、若手研究者を探し、採用する(非常勤)。限られた予算の中で、未来に向けたそのための予算措置をはかるよう努める。

3)建設産業・建設労働に関する情報の収集・整理・提供
 これまでの新聞の切り抜き、行政機関等の調査・統計、関係資料・書籍などの収集をいっそう充実させ、引き続き会員に直接提供したり、サイト上に掲載して一般公開していく。

4)成果のとりまとめと普及
 研究調査、政策提言の成果を、採算性をふまえて、ブックレットや単行本にして出版する。


3 出版活動の充実
1)機関誌「建設政策」の方向
 会員のニーズ及び情勢に適った企画の充実や誌面レイアウトの工夫、編集体制の強化をはかる。
2)学術誌「建設政策研究」の方向
 第1号〜第4号の成果を検証し、同誌の刊行の目的をふまえて、今後の刊行の方向を見定め取り組む。

4 政策提言・政策論議の場の創出
 ○研究所主催あるいは共催の公開討論会、シンポジウム等を開催する。
 ○関係学会での報告や内外機関誌や学術誌に論文を投稿する。
 ○各種団体での報告や講師派遣のPRをはかっていく。
 ○成果をウェッブサイトに公開する。

5 NPO法人としての組織の整備
 NPO法人の特徴を活かした事業戦略を構築する。そのために、情勢に見合った取り組みテーマの設定、資源の配置、継続的な活動を可能にする収入の確保に取り組む。また、NPO法人としての組織整備を段階的にはかっていく。

6 建設産業・労働研究における国内外の連携
 国内外の研究機関・団体と調査研究、情報の交流を行うように努める。

7 組織運営の効率化
1)組織運営
 総会、理事会(理事)、理事長、研究(部門)、事務局の機能、かつ、責任者とスタッフの役割、責務・権限を明確にし、システム化、効率化を図り、業務をスムーズに進める。
2)体制(役員、事務局、研究員)
 役員(理事長、副理事長、専務理事、理事、会計監査)と事務局(専務理事1名、雑誌・調査研究1名、会計・庶務1名)ついては、現行の体制を基本とする。研究員に関しては、現行の4名体制(研究3名、研究プラス実務1名)を維持しつつ、若手中堅研究者の成長をはかり、若手中堅研究者を研究分野の要としていく。

8 会員拡大
 会員拡大は、研究所の活動の成果を普及していくこととともに、財源確保においても重要である。そのため、建設分野にかかわる団体・個人に幅広く加入を呼びかけていく。また、団体会員の構成員に個人会員として加入してもらうよう協力をあおぐ。
 【目標】第5次中期計画の実績をふまえて下記のとおりとする。
   団体会員  201組織を15組織拡大し216組織とする。
   個人会員  414名を40名拡大し454名とする。
   雑誌定期購読者  62部から82部をめざす。

9 財政基盤の強化
1)収入の安定確保
 研究所の会費と調査研究費の多くは団体会員によるものだが、全国的に団体会員の組織員数は低下しており、研究所が恒常的に収入を増大させていくのには厳しい状況にある。収入の増加をめざし、(上記の)会員拡大以外に下記の点に精力的に取り組む。
 ○会員団体からの委託調査・共同研究会等の受託による収入の確保。
 ○議員研修会等のセミナー開催による収入の確保。
 ○行政機関、民間機関からの委託調査研究への応募、受託による調査研究費の確保。
 ○助成団体、各種団体の助成金への応募、採用による調査研究費の確保。

2)収入の効果的使用(効率的な支出)
 特別の事情がない限り収支がマイナスにならないように効果的、効率的な支出を行う。効果的な点では、研究所の将来発展をみすえて、世代交代にむけた若手研究員の確保に対応した予算配分を行う。効率的な点では、会合開催の合理化や委託調査収入と調査費用の整合性をはることなどで支出を抑制していく。

3)会計・税務対応
 研究所3ヶ所(東京、関西、北海道)の会計・税務を整備する。そのための準備を段階的に進めつつ、日常の業務を取り扱っていく。不明な点などは税理士に問い合わせ、引き続き適切な処理を進めていく。